カウントダウンで会いたくて

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「私みたいな年下の女子高生に『指導』されるのなんて、イヤじゃないですかね?」 「大丈夫でしょ。綿谷さんは岩崎君に継ぐベテランだし、亀和田君と年齢も近いし」  個人的に、誰かが誰かに怒鳴られたり怒られたりしているのを見るのが、大の苦手だったので、私が引き受ければ岩さんもあんなにカリカリしなくても済むのではないか、そんな安易な気持ちで、恐れ多くも指導役を引き受ける事にした。 「亀和田さん! 和定食はそのお盆じゃないって!」 「亀和田さんっ! 七番卓の追加オーダー、通してないでしょ!」 「亀和田さーん!!」  岩さんの代わりに、私が叫びまくる事になったけれど。 「はぁぁぁー」  『人に何かを教える』といういつもとは違う作業にどっと疲れて、休憩室で思わずため息をついてしまったら 「……すみません。ホントなんか色々」  ため息の原因の本人がやってきて、あわててそれを呑みこんだ。 「あ、いえ、亀和田さんのことでは」  みえみえの嘘になってしまったけれど、「マジ物覚え悪過ぎですよ! それでも名門大学生ですか!」なんて本音を言えちゃうキャラじゃない。それでも、薄く笑って背中を丸めて、申し訳なさそうに休憩室の端っこに座る亀和田さんが、なんだか憎めなくて 「飲食業のバイト、初めてなんですか?」     
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