カウントダウンで会いたくて

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 積極的に話しかけてみることにした。 「えぇ」 「今まではどんなバイトを?」 「通信教育の添削なんかを……。やっぱり、俺には接客業は向いていないですかね」 「そんなこと、決めるのはまだ早いですよ! あきらめるのは、全力出してから!」 「……ポジティブだなぁ、綿谷さんは」 「へへ、それしか取り柄がないもんで」  ポジティブ。前向き。私を称してよく言われる単語だ。でも大抵の場合、その言葉の裏には「暑苦しい」とか「押しつけがましい」とか、非難めいた意味合いを込めて向けられる事も多かった。けれど、亀和田さんの言葉にはそんな含みはなく、ストレートに私に届いてきたのが嬉しかった。 「でもどうしてファミレス? 亀和田さんの大学だったら、家庭教師とかだってひっぱりダコなんじゃ? 」 「……人と話すのが苦手だったんですけど、就活に向けてそんな事ばっかり言ってられないかなぁって」 「だから接客業を?」 「はい」  驚いた。亀和田さんもずいぶんと、「前向き」な人種だった。 「亀和田さん、敬語じゃなくっていいですよ。私の方が年下なんだから」 「いや、綿谷さんの方がここでは先輩だし、俺は教わる立場なんで」  「前向き」で「真面目」だ。     
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