カウントダウンで会いたくて

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「あと、名前も『亀』でいいです。その方が呼びやすいだろうし」 「じゃあ、『亀ちゃん』って呼びます。 亀ちゃんって。とにかく亀ちゃん!『自分はダメだ』だなんて思わずに、イメージをしながら接客するのが、イイと思います!」 「イメージ?」 「そう! もし自分がお客さんだったら、どんな風に接客してもらったら嬉しいかとか、もし自分がベテラン給仕さんだったら、ここでどんな風に動くのかとか、常にイメージしながら接客するんです。そうすると格段に、イイ方向に変わってくるはず!」 「……それ、すごく分かりやすい」  そう言って亀ちゃんは「にへら」って笑った。眼鏡の奥の目がかまぼこみたいな形になって、歳上の男の人のはずなのに、すっごく可愛かった。  その亀ちゃんが、スーツなんか着ちゃって教壇に立っている。岩さんから陰で「ドジでのろまな亀」だとか(なんだかそんな有名なドラマのセリフがあったらしい。昭和に)、「残念イケメン」だなんて悪口言われながらも、なんとか接客業も様になってきてたのに、亀ちゃんは私がテスト期間でバイトをお休みしているうちに、お店からいなくなってしまった。  その亀ちゃんが、教室にいる。  すぐにでも話しかけたかったけど 「先生ー、彼女さんとかいるのぉ?」     
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