カウントダウンで会いたくて

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「それって私が『物覚えが悪くって、使えない生徒』ってことですか?」 「あ、いや、そういう意味では」 「いいんです。自覚してますから」  数学に関しては、何とか留年をまぬがれて進級出来れば御の字と言うレベルなのだ。お恥ずかしい限りだけれど。 「でも数学って、綿谷さんの将来にだって、役立つこと多いと思うよ」 「私の?」 「うん。自分のお店を持つなら、経理に経営に、数字は常についてくる。だから今から数字に対する苦手意識を、少しでもなくしておくのがイイと思うんだ」  『いつか自分で、カフェを開きたい』  ファミレスの休憩室で、そんな風に夢を語ったことを、亀ちゃんは覚えてくれていた。 「でも亀ちゃ……、じゃなくて、亀和田先生が教師を目指していただなんて、知りませんでした。あ、だから接客業で、人前に立つのに慣れようとしていたんですか?」 「うーん、どちらかというと、バイトは実習のためかな」 「実習の?」 「うん。ゆくゆくは大学院に進んで、数学の研究者を目指したいんだ。教員免許は資格として、保険的に取っておければって」 「研究者!? じゃあいずれは大学教授? ノーベル賞!?」 「いやいや、それは飛躍しすぎだよ」  必死に否定する姿は、実に謙虚で真面目な亀ちゃんらしい。     
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