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訪問
「――よし、今日はここを獲物にしよう」
真夜中と言われている時間帯に、私は一つのアパートの部屋の前に立っている。
そのような時間に見知らぬ他人の家の前で立っている女は、下手をすれば警察沙汰になるだろうが。
――甘い話だ。それは“人間だけに適用される”話だ。
私は人間ではなく、その人間の死後である『幽霊』なのだから。
まあ、どのように死んでしまったのかは、今更どうでもいい話だ。
この身体になってから多少なりとも良いことがあったから、そんなことは気にしていない。むしろ喜ばしいことだ。
しかしこの身体の欠点なのが『真夜中にしか動けない』と言う点だな。
雰囲気を考えれば真夜中にしか動けない……まあ分かる。幽霊と言うのは基本的には夜に活動するモノ……だと思うから。
でも……たまには太陽の下で思いっきり羽を伸ばしてみたいと思ったこともなくはない。だけど私は死んでしまっているからどうすることも出来ない。
幽霊は太陽光線に当たると強制的に成仏してしまうのだから。
だったら――死んだ後で楽しめることをするのが賢しいモノが取る行動で。
この身体の利点と言うのが。
例えばの話――霊体と言う身体だからこそ“壁をすり抜け”出来る。
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