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私はこれを活かして、今日この日まで沢山の人間を驚かしてきた。
目が覚めたら女がいる――これだけで恐怖でしかないのに。
その女が幽霊だと言う事実を思い知った奴等……あまりにも見物だった。
そして今――私は玄関の扉をすり抜けて、この部屋に住む人間の元に行く……はずが。
「………………」
「………………」
………………えーっと……
何故だろう、私の目が悪くなったのかな。
今日、私が脅かす予定の男が……その、ばっちり私を視ている。口に歯ブラシを加えながら。
と言うか、私と目が合っている。
まさか…………失敗したか……?
――いやいや、焦るな私ッ! まだ何も始まっていないはずだ!
今の私は上半身だけ身体をすり抜けさせた状態だ。
ただの人間にそのような芸当が出来るわけがない――であれば!
目の前にいる男は私を幽霊と認識した時点で腰をぬかすはずだ!
ククク……ならば焦る必要など最初からないと言うことだ。
さあ、驚くが良い! そして私を笑かすが良い!
お前達生者の驚く顔が私の楽しみなのだから――ッ!
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