第1章

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「まあそういうことで……シエル君には一肌脱いでもらいたい」 何か嫌な予感がする。 「シエル君。君にはあっちの世界から勇者を何としてでも5人、それもすぐにパーティが組める有望な人材を集めてきてほしい。剣術適性、魔術適性、軍師適性、とにかくバランスの取れた適性のある人材を」 そんな無茶な、そう言わんとした俺の表情を読み取ったのか男は続ける。 「時間がないんだよシエル君。君の言わんとしていることはよく分かる。しかし王国軍ではもう魔王軍の魔の手は止められん、限界なのだ。既にいる勇者達も一向に成長の兆しがない。どんな手を使ってもいい、あっちの世界……日の国から優秀で有望な人材をスカウトしてきてくれないだろうか」 「……スカウト期限は」 状況は思ったよりも切迫しているらしい、俺は男の言葉に肯定する意味で指示を仰ぐ。 「1ヶ月……遅くても3ヶ月以内で頼む。君の双肩にこの王国の命運は掛かっている。頼むぞ」 俺は力強く頷くと男の下がってよろしい、という言葉を聞いてから回れ右をし扉のドアノブに手を掛けた。 「……勇者、か」 部屋を出る直前に聞こえてきた男の呟き。特に深い意味は無さそうに思ったが、どんな顔をして呟いたのか俺は知る由もない。
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