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ーー勇者スカウト課。
ここが俺の所属する部署である。
転生し勇者となった者に関する一切の業務を執り行う部署で、スカウトする者の資料を作り勇者候補生をリストアップし会議で誰をスカウトするかを決め神官への根回しや転生者に関連する事務処理をしたりもする謂わばなんでも課だ。
「お疲れ様でーす、長かったですね」
部署に戻りデスクに向かい溜まった仕事をこなそうとした時に話しかけてきたこいつは、やや面倒臭いが仕事のできる後輩だ。
「なんだミカ、頼んでおいた勇者候補生の資料はできたのか?」
「できましたよ!ばっちりなんですから!」
自信満々に渡してきた資料を一通りパッと眺めると、書類の山の頂上に無造作に積み上げる。
「ちょっと!急ぎで作ったんですからちゃんと見てくださいよぉ~!」
「分かってる、会議の前にはちゃんと見るから。それに今はそれどころじゃないんだよ」
「何かあったんですか?」
ミカは興味津々になったようで半ば興奮気味に聞いてくる。
「まだ課長に報告してないから、報告したら教えてやる」
俺がそう言うとえーっ!とオーバーに残念がり係長のケチ!と吐き捨て早足で自分のデスクに戻ってしまった。
歩き方で機嫌が少し悪くなったのが丸わかりだ。
今のうちにふて腐れるだけふて腐れてろ、そんな暇はなくなるさ。
そうこうしているうちに課長が部署に戻ってきた。
あーあ、あくびなんかしちゃって……。
俺の報告を聞いた後の課長の顔が容易く想像できた俺は、自身と部署に降りかかった災難もあってか何だかおかしくなり緩んだ頬を無理矢理引き締め席を立ったのである。
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