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「ん? ああ、そういうことか。それなら何も一々列車を止める必要はねぇよ」  黒き巨人の言葉に挙げた手を横に振りながら答えた山羊阿修羅は、やがて黄色い眼球を私に全て向けてまるで忠告でもするかのように強い口調で言葉を紡いだ。 「そこのお客サンが列車から飛ぶ気概さえあれば、結果は同じなんだからよ」  理解できない提案。  一体何を言っているのか理解できないまま、巨人の脳天気な声が場を続いて反響する。 「ああ。それもそうですね」  反論する余地もなく、伸びてくる触手は私の腕を掴み、運転室の扉を開ける。  自らの意思とは関係なく潮風の当たる連結部に出された私は、この時ばかりは情けなくも声を荒らげた。 「ま、待て待て! なんだこれは!?」  理解する余裕も気概も私にはない。  説明されても納得するつもりは毛頭なかったが、説明なしに海上を走る列車から突き落とされてはたまらないと声を荒げたものの、山羊阿修羅は既に自らの仕事に戻っている。  黒い巨人だけは触手を操って体を拘束しているだけあって私の行く末を見届けようと、質問に答えを返してくる。 「非常に申し上げにくいのですが、この夜の世界からお客様をお返しするにはこのような手順が必要でございまして」     
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