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 3つの顔の内のひとつが私を睨む。  実際、睨んではいなかったのかもしれないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は些か不気味が過ぎて、私には睨んでいるようにしか思えなかった。  浮世離れしていた私の心も流石に恐怖を懐き、一瞬腰が抜けそうになってしまう。  山羊阿修羅は掬い上げていた石炭を炉に焼べ終えると、炭の付いた顔を順番に首に掛けたタオルで拭い、やがて流暢な人間の言葉で私に握手を求めてきた。   「此処の責任者をやっている者だ。この度は災難だったな」  威圧的な見た目と、前時代の力仕事をしている者に対する偏見を取り除いた場合、その言葉口調は大変理性的な構成をしていた。  一応握手に応じ、人間の掌とは全く違う感触を噛み締めながら何を話すべきかと悩んでいると、真横に控えていた黒き巨人が代わりといわんばかりにすかさず要件を伝えてくれる。 「お客様を降ろして差し上げたいので急停止をお願いしたいのですが」     
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