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だが、宏人は目線を合わせるため身を引くして威圧感を与えないよう配慮した。屈託のない笑顔で対応していたのもあるが、老齢の男性患者も相手が男性なのもあり。
自分が身を引かなければならない状況に落ち入ったので大人しくなった。
「今日は、リハビリここまでにして
病室もどりましょうか。」
老齢の患者は大人しく従い宏人と一緒に病室のある病棟へいった。しばらくして宏人が戻ると
「愛沢さん、助かりました。」
順が声をかける。
「大丈夫?最近、暑いからイライラ
してる人多いよね」
「ええ、大丈夫です。怒鳴られるのは
どうも慣れなくて・・・」
「じゃ、もう行くよ」
「はい、あの・・・」
「うん?どうした?」
「いえっ!何でもありません!」
順は、密かに宏人に好意を寄せていた。だけど、自分の容姿には自信が持てず声をかけづらかった。
痩せ型の体質に鼻は低く歯茎が目立ち目は一重で細くて小さい。小学生の頃は、『しじみの目』なんて
よくからかわれていた。また、手先がそんなに器用ではなかったので料理は苦手だった。
更に追い討ちをかけるような出来事が、起こる。宏人には婚約者がいたのだ。
『タナヤ マナ』
その名前を聞いたとき、しばらく思考が停止していたが、やがて大脳の奥底から、ゴゴっと何かが込み上げるように記憶が蘇る。
思いだした!
昔、仲間と一緒になっていじめていた
あの娘が・・・
そんな・・・
順の心の奥底にドス黒い嫉妬の炎が
ブォーーーっと音を立てて渦巻いていた・・・
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