昔馴染み

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室内はレオニードと劉祜の二人きりになった。 「悪い。俺、迷惑をかけてるよな。」 レオニードは静かな声でそう言った。 「違う。」 劉祜は短くきっぱりと否定した。 「レオニードに言っていないことがある。」 真剣な顔で劉祜はレオニードを見た。 二人きりの時にだけ呼ぶ愛称ではない呼び方をした伴侶が何か特別な話をするのだとわかった。 しかし、言っていないことについてレオニードは思い当たる節が無かった。 「レオニードが言った話を元に計画は立てた。 ……暴虐王は死んでその混乱に乗じて敵を討つ。 そこは話していた通りだ。」 だけど。と劉祜はそこで言葉を一旦区切った。 「計画にはその先がある。」 劉祜は決意のこもった声で言った。 「いずれ俺は宮殿に帰るつもりだ」 静かに言った言葉にレオニードは驚いた。 「二度も帝位を簒奪するつもりですか?」 意趣返しのつもりは無かったがその言葉に険があったのは否定できない。 けれどレオニードのその言葉に劉祜は面白そうに笑った。 「俺らしくていいだろう?」 劉祜はそう言った後、「どうせまた妃になるんだ。別にレオニードのことを知っている人間が少しばかりいても問題ないさ」とにやりと笑った。 「本当に戻るつもりなのか? ならなんで今こんな風に……」 まるで関係の無いと思われることをしているのか? それをレオニードはうまく言葉にできなかった。 違う生き方をするために貿易を選んだのだとレオニードは信じていた。 けれどそれは違った。 がくりとレオニードの体から力が抜けた。 早まって彼を殺さなくてよかった。 はあ、とレオニードは大きく息を吐いた。 それから「なぜ最初からそれを教えてはくれなかった」と怒気をはらんだ声で言った。 はじめに教えておいてくれればそれで済んだ話だ。 ユーリィのことだって、あのお姫様とのことだってその前提ならもっとやりようはあった筈だ。 それに、あの場所にもう一度戻るのならば、レオニードには学ばなければならないことが沢山ある。 貴族としても王族としても足りないことしかなかったのだから。 「不確かすぎたから。」 困ったような顔で劉祜は笑った。 けれど、そう言われるのは想定の範囲のようだった。 「不確かな未来を共有するのが伴侶ってやつなんじゃないのか?」 レオニードはそう答えた。 今度は劉祜は驚いた顔をしていた。 レオニードは、やっぱり自分と目の前の男は何もかもが違うと思った。 積み重ねてきた経験が違うのだから、考え方があまりにも違う。 それでも、この孤独な王様から離れてやるつもりはレオニードには無かった。 初めて彼を見たときの様なさみし気な背中をさせるつもりはもう無いのだ。
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