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嫁入り
レオニードは隣国へと向かう馬車の中で一人溜息をついた。
隣国、といってもレオニードが子供の頃に隣国だった国は帝国に滅ぼされ今はもう存在しない。
どの国にとっても隣国というのはある一つの帝国を指すようになってしまった。
その帝国から自国の王に特使が派遣されたのはつい先日だと聞いている。
詳細すら聞かされていないレオニードは名ばかりの第七王子だ。母親は王族という訳ですらない。
帝王学なんてものは学んだことは無いし、実際今の今まで軍人として働いていたのだ。
それが突然王都に呼び戻されたと思ったら「喜べ!帝国がお前を妃に迎え入れたいと言っている。」という具合で突然出された話にレオニードの頭の中はこんらんしていた。
まるで意味が分からないことを自分の国の大臣達が言っている。
けれど今や世界最大の国家になった帝国に自国が逆らえる筈がないのも分かる。
「俺、男なんですが……。」
思わず呟いてしまった言葉に「先方は性別は指定してこなかった。」とだけ答えられる。
それでようやくなんとなく状況を察することができた。
おそらく帝国は人質が欲しいのだ。男でも女でも構わないから王族から人質を差し出せと言われたのだろう。
そもそも、面識もなければ国の公式行事にも参加していないレオニードが指定される筈がないのだし“性別は”と言われたのだ。
けれどレオニードはそれが詭弁だということもよく知っている。
王族の誰かを差し出せとでも言われたのだろう。
それに諾々と従いたくはないのだろう。
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