嫁入り

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誰にも見送られず馬車で向かった帝国の帝都は、自国のそれとは比べ物にならない位栄えていた。 富がこの場所に集まってきているのだろうか、活気があるしそれに服装等で様々な場所から人が集まっていることも分かる。 ぼんやりと外を眺めながらため息をつく。 どうせ碌なことにはならないのだ。市が見える。そこも活気がありそうで思わず馬車から降りてしまうかなんて考えてしまう。 実際はそんな事できやしないのだけど、考える位は許して欲しい。 自分かわいさにここで逃亡すればおそらく帝国は約束を反故にされたという大義名分を掲げて帝国は故郷を滅ぼすだろう。 それを許容できるほどレオニードは悪人ではなかった。 明らかに自分の故郷と文化が違うであろう織物が市に並んでいる。 行きかう人の着ている服もレオニードのものとは全く違うものだ。 髪の毛自体みな濃い色をしている。 全く違う文化の国でレオニードは一人きりだ。 王城についたがまともな出迎えは無い。 役人らしき男が出てきてこちらをチラリと見て「陛下はお忙しいので暫くはあちらでお過ごしください。」と言われただけだった。 明らかに歓迎されていないのが分かる対応だ。 こちらから付いてきた官僚も似たようなもので案内された殿につくと、こちらを憐れむように見つめたのち直ぐに帰り支度を始めている。 残ったのは俺と従者としてつけられた少年が一人。 教育係すらいないのだ。本気で妃として送り込んだつもりすらないのだろう。 公務などは絶対にできないしこの体制では”お出まし”になることさえできない。 「お前、親は?」 レオニードは与えられた部屋のソファーに座るとまずそれを従者になった少年に聞く。 「お、おれが小さい時に……。」 だろうなとレオニードは思った。いよいよ自国の目的が、レオニードとこいつにここで死ねという事だろうと確信を深め溜息をつく。 なるべく暴虐王様の機嫌を損ねず長生きをする。それしかないのだろう。 「俺の名前は、レオニード。お前は?」 「はい、ユーリィと申します。」 訛りのキツイ発音でユーリィは名乗った。 暴虐王と呼ばれる皇帝は、気に入らない人間がいればすぐに適当な罪をでっちあげて処刑をすると聞く。 レオニードはいわば生贄の様にこの国に送り込まれたのだが、王族としての矜持なんてものは元々持ち合わせてはいない。 この自分と同じように見捨てられた少年と、何としても生き延びてやりたいと思った。
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