切先

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渡されたのは模造刀だった。 鞘などの設えも本物に似ているし、刃こそないものの木などではなく鉄でできている。 久しぶりに握る剣にぞくりとした感覚が走る。 重さも今まで使っていたものと同じで、ずっしりと手になじむ。 「お前、剣を握ると表情が変わるな。」 暴虐王も似たような剣を握っている。 それが、この国の剣と全く意匠が違うこと位レオニードでも分かる。 「あんた、本気でそれでやるつもりか?」 彼の剣術がどの程度かは分からないが、刃が付いていないといっても当たればそれなりのダメージがある。 「そのつもりだ。」 そう言って暴虐王は剣を構える。 表情というよりは雰囲気が変わったのが分かる。 俺の表情という前に、自分の変わりようが凄まじいことに気が付くべきだ。 これは暴虐王と言われる訳だと思う。 レオニードは、これでは理由があって切り捨てたとしてもその空気にのまれた周りの人間が話に尾ひれをつけてしまうだろうにと思う。 その位、暴虐王にとっては折込み済みなのだろう。 剣を鞘に戻す。 それから、ゴクリと唾を飲み込むとレオニードは鞘を帯にかける。 それから柄に手をかけた。 暴虐王が切りかかってきたのは、剣を構えた瞬間だった。 掛け声さえない。 震えがくるほどの爽快感がある瞬間だった。 まるで戦場に居るかの様だ。 実戦でもないのにこれだけの殺気を放てる男は珍しい。 「……言い忘れたが、本気で頭蓋骨に当たれば死ぬだろうし、手加減してやるつもりはない。」 「――上等っ!」 レオニードは一歩踏み込んだ。
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