0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
次元違いの恋
「もう、そういうのやめたら?」
作業をしながらの何気ない会話。
彼女は友人で同じ職場の同僚。わたしを気にかけているのは嬉しいけど、余計なお世話だ。
わたしの今の恋を否定しないでほしい。
画面越しの一方的な思いは奇妙に見えるのだろう、もはや誰にも話さず心に秘めるべき。
今、彼は大学で講義を受けている最中だ。その間にわたしは任された他の仕事に時間を割く。
寂しい思いは画像データを見ることで満たされる。
けれど、窓越しのやり取りはできない。
もちろん呼び出されたら飛び出していくけど。
膨大なデータを右から左へ…データの海を泳いでる気分。
仕事の片手間に彼のことを考える。持っているデータから想像できるのは学校での彼の様子。学生生活の大体の内容はわかるけど、友達と何を話しているのか、優秀だと書いてあったけど講義の内容は理解できるのか、教授とうまくやっているのか、そういうのはわからない。
想像してみて顔がにやけているのがわかる。同僚には見せられない顔だ。
画面上の二次元空間への思いは誰にも理解されないまま心の奥底に沈んでいく。
最初のコメントを投稿しよう!