美しき獣

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重いスーツで、重い扉をゆっくりと押す。 石が邪魔をしているけれど、滅多にかかない汗をかきながら時間をかけて、その扉を開けることが出来た。 闇の世界。 暗い、真っ暗闇にポツポツと星が浮かんでいる。 俺は教えて貰った方へと視線を変える。 それは、当たり前のように浮かんでいた。 青い。 青い命の地球。 スーツの中から、俺はガラス越しにそれを見つけた。 俺達の原初の地。 人が人として住む星。 良かった。 本当に、あったんだ。 今、教えに行くから。 凡庸のスーツでは防げない強い宇宙線で、目眩がしてきた。 月生まれで地球人と違って、脆い俺は。 静かに横たわりながら、青い星を焼き付けた。 完。
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