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いつか、この空を破って見てみたいな。
そう君が言ってから、何年が過ぎただろうか。
俺は重いスーツを纏って、1歩、 また1歩と足を進める。
吸い込んだ空気は、生ぬるく、いつも息苦しい。
「本当にここでいいのかい?」
ここまで送ってくれたタクシードライバーが、車を回しながら俺を変わり者のように言った。
「ありがとうございました」
俺はそれだけ言う。
それしか、きっと分かって貰えないから。
「幸運を」
死に行く者への餞別の言葉を残し、車は去る。
太陽の光を浴びた車は塗装が剥げて、ツルツルしたタイヤは砂ぼこりをあげていた。
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