裏切りという名のペルシャ猫

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「んっ、ユダ……っよせ」  言った通りに舌が何度も往復して、確かに感じた事のない快感だった。だけど……タチのプライドみたいなものが、崩れ落ちていくような気もしてた。 「アッ!?」  ついに、声が裏返った。穴に舌がねじ込まれて。反射的に暴れようとしたが、驚くほど強い力で押さえ付けられる。  くちゅ、ぴちゃ……。いつもは俺が与えてる筈の熱が、俺の下腹を熱くした。 「っは・ンァッ」  自分のテクニックには自信があったが、ユダのいやらしい舌使いにも、翻弄される。ぐりぐりと奥を刺激されると、目が眩んで無意識に瞼を閉じた。ネコが何故『最中』に目を閉じるのか、分かったような気がする。一生分かる筈がないと思っていた感覚。信じられない事に、穴がはくはくとひくついてた。 「充分に潤ったね、潤」 「やめ、やめろッ! 頼む! やめてくれ!!」  思わず懇願していた。だけど叫びも虚しく、ユダの大きな息子が押し入ってくる。  間髪入れず、パンパンと肉のぶつかり合う音を立てて、ピストン運動が始まった。ただのピストンじゃない。前立腺を擦り上げるような、ひどく手慣れた犯行だった。 「ヒンッ・は・あ・アッ!」 「潤。気持ち、い?」  数え切れないほどの男と身体を重ねたが、後ろはまだ処女だった。無理やり奪われる喪失感と、何より奥の方から高まってくる正体不明の切なさに、我知らず涙腺が崩壊する。 「ふぇっ・ヤ・嫌ぁっ! ユダ、ユダ! も、イ・くっ!」 「イってよ。いっぱい出して」 「ふぁ・あ……あ――っ!!」  生理的に、きりりと穴が締まり上がった。 「愛してる、潤……ッ」  直腸が、生暖かい体液に満たされるのが分かる。俺はもう、メスに堕ちてあられもなく嗚咽してた。 「ふっ……う……ヒック」 「潤……可愛い。純粋の純でもあるんだね。僕、アンタの事がホントに好きになっちゃった……」  でも俺は、それどころじゃない。初めての経験に、情けないがただ小刻みにしゃくり上げてた。 「付き合ってください。僕、ミハイル。潤の本当の名前も、教えて」 「っ……嫌だ」 「何で? ……僕の事、嫌い?」  涙で滲む視線を上げると、ミハイルも泣きそうな顔をしてた。  う。俺の、初めての相手。複雑な感情が渦巻いて、最終的に柄にもなく、胸がキュンとしてしまう。
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