裏切りという名のペルシャ猫

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「潤……きら、い?」 「わ。馬鹿っ」  ミハイルは、突然泣き出した。俺の頬に、大粒の涙がぱたぱた落ちる。 「嫌いじゃ……ない」 「じゃ、じゃあ、名前、教・えてっ」  俺はその縋るような泣き顔を眺めて、しばし黙りこくった。 「……笑うなよ」 「うん」  俺は、最大のコンプレックスである、名前をポツリと呟いた。 「……三郎……」  笑われると覚悟してた。でもミハイルは、涙をそのままに、ぱあっと表情を明るくさせた。 「三郎! じゃあ、三男なんだな!」 「ああ」 「良かった!」 「ん?」 「子供作れって言われないだろ。三郎。愛してる。結婚しよう」  ミハイルは、愛おしそうに俺をきゅっと抱き締める。 「もう一回、いい?」 「勝手にしろ……」 「ふふ。勝手にする」  俺は火照ってしまう頬を隠して、顔を逸らす。だが顎をつままれて目が合った。パープルアイズと。悔しいが、宝石のように美しかった。 「三郎、幾つ?」 「言いたくない……」 「そう。僕は、今日三十の誕生日なんだ。日本人て幼いから、三郎くらい渋いのが好き」  挿れっぱなしで、今度はゆっくりとねちっこく抜き差しされる。テクニックによっては、激しいピストンより遥かに気持ちいいと、今までの相手から聞いていた。
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