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戦闘員
昨日作戦会議で上映されていた映像を、特殊な加工をしてから海外のサーバーを経由して、悪の組織が運営しているダミー会社のパソコンを使って、配信しています。
宣伝広告のオファーが只今殺到中で、一日しか経ってないのに十万再生していて、スポンサーが挟んだCMで売上が三%伸びたと報告を受けている。その為、伸びた売上の一%を報酬に貰ったら、数十万でした。ボロいね。
他にも収入源は有るのだが、今の話には関係無いので割愛。怪人が現れてから、ヒーロー戦隊の到着から遅れて現れる助っ人との時差を解析して、どの辺りが活動拠点かをすでに割り出せていた。さあ、助っ人の公開処刑は目前だ!
次の日、明日に控えた土曜の戦闘に向け、最終調整が行われた。次に戦う怪人も決まっている。この怪人の面白い特性は、今回の作戦にピッタリだったのだ。作戦名は「搦め手」。わざと負けて相手を油断させ、本当の目的を隠す。そして連日戦闘をして罠にかけるのだ。
決戦の日の土曜。私は派手な演出で幼稚園のバスを襲い、ヒーロー戦隊の到着を待っていた。泣き叫ぶ子供達。良い音色だ。この前の怪人の奇声とは大違い。
『現れました。クイーンヴァロス様、二時の方角です!』
監視班から無線を受け、舞台の幕開けを告げる。
「子供達、ようやく正義の味方のお出ましだ。さあ、助けを乞うが良い!」
「うわーん、ヒーロー戦隊助けてー!」
「怖いよー! お家に帰りたいよー!」
「びえーん! ママー!!」
一人しか助けを乞うて無いじゃん。まぁ良いか。
「卑怯だぞ、子供達を離せ!」
「悪の者に卑怯を唱えて何とする、愚かよ。ヒーローはオツムが弱いと見える」
「ギャハハ!」「キキー!」「キキー!」
今回のやられ役怪人と、戦闘員達が笑い出す。戦闘員は奇声しか発せられない、培養戦士だ。怪人の細胞を使い、クローンの様に量産している単なる数合わせだ。ヒーロー戦隊に勝った事は一度たりも無い。
「くそぅ、このままだと子供達が!」
「ヒーロー戦隊と謳っているのだ、戦って勝ち取れば良かろう。ほれ遊んでやれ」
「ハハー!」「キィー!」「キィー!」
助っ人が登場する迄は、これで時間が稼げるだろう。
「行くぞ皆んな!」「「「「オウ!」」」」
戦いはヒーロー戦隊の優勢に見えた。まぁ勝てないのが前提な戦闘員だし、当然だけど。しかし、やられ役の怪人が一人を吹っ飛ばした事で戦況が変わる。
「うわー!」「グリーン!」「なんてパワーだ!」
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