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「あら、ちゃんと起きて来たわね」
リビングに顔を出した橋本穂香に、母が満足そうに微笑んだ。
「うん」
「どうしたのよ?」
「あ、うん。何でもないよ」
生贄投票について、家族に相談をしたいところだけど、どうせまともに取り合ってくれないに決まっている。
「そう? なら良いけど」
母はダイニングチェアーに腰を下ろした穂香の前に、インスタントのレモンティーを置いてくれた。
穂香はそれに対して、お礼を言うこともなく、トーストを手に取ってイチゴのジャムを塗る。
いつもと変わらない朝。
でも、確実にいつもとは違う。
食欲はわかないけど、穂香はトーストにかじりついた。
いつもより早起きなのは、昨夜母に寝坊したら、スマートフォンを取り上げられると言われたからでは決してなく、少しでも早く登校して、クラスメイト達の状況を確認したかったのだ。
中でも特に、須崎拓也とコミュニケーションをはかりたい。
普段食べるのが遅い穂香が、人並のペースで食事を終わらせると、急いで身支度を済ませて学校に向かった。
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