第4章 始まった不安との戦い

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「おい、作業を続けろ!」 優しい口調だった林が、部下に対して厳しい口調で怒鳴ったので、クラスの中に緊張が走る。 そのまま林は田川の前に進むと、田川の机の上に片手をつき、前かがみになった。 「君の名前は?」 普段は強がって悪ぶっている田川が、林の威圧的な目に気圧されて言葉が出て来ない。 「名前は?」 「た……田川です」 「ぅむ……。田川くん、スマートフォンがないと困りますか?」 「そ、それは……はい」 「じゃあ大人しく我々に従った方が良いね」 「え?」 「いったん回収された君のスマートフォンは、早ければ数日中には君の手元に戻ると思います。しかし、ここで抵抗して逮捕されれば、君がそのスマートフォンを操作出来るのは、数日後でないことは確かだ。これは脅しではありません」 「そんな……」 「ことこの件に関しては、本当に異例だよ。異例中の異例。被害対象者側のスマートフォンを強制回収で、それに従わない者を逮捕だなんて、普通じゃ有り得ない」 林は田川の目を見つめる。 「それほどまでに、国は生贄投票に対して過敏なんです」 林はそれだけ言うと、田川に背を向けて教壇に戻った。
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