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「おい、作業を続けろ!」
優しい口調だった林が、部下に対して厳しい口調で怒鳴ったので、クラスの中に緊張が走る。
そのまま林は田川の前に進むと、田川の机の上に片手をつき、前かがみになった。
「君の名前は?」
普段は強がって悪ぶっている田川が、林の威圧的な目に気圧されて言葉が出て来ない。
「名前は?」
「た……田川です」
「ぅむ……。田川くん、スマートフォンがないと困りますか?」
「そ、それは……はい」
「じゃあ大人しく我々に従った方が良いね」
「え?」
「いったん回収された君のスマートフォンは、早ければ数日中には君の手元に戻ると思います。しかし、ここで抵抗して逮捕されれば、君がそのスマートフォンを操作出来るのは、数日後でないことは確かだ。これは脅しではありません」
「そんな……」
「ことこの件に関しては、本当に異例だよ。異例中の異例。被害対象者側のスマートフォンを強制回収で、それに従わない者を逮捕だなんて、普通じゃ有り得ない」
林は田川の目を見つめる。
「それほどまでに、国は生贄投票に対して過敏なんです」
林はそれだけ言うと、田川に背を向けて教壇に戻った。
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