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その頃、警視庁公安部サイバーテロ課では、生徒から押収したスマートフォンの解析が急ピッチで進められていた。
「どうだ?」
「ダメですね」
上司に聞かれて、解析班の山口は首を横に振る。
「今のところ、どの端末にも何の痕跡も残されていません」
「何の痕跡も?」
「ええ、何らかのアプリがインストールされた様子も、プログラムが書き換えられた様子も見受けられません」
「そうか……では、当初の予想である、ウイルスによるプログラムの書き換えではないということか?」
「はい。今調べ終えたものまではその状態ですが、生贄投票は一斉に送り付けられたのですから、全ての端末に同じことが起きているはずなので、おそらく残りも同じだと思います」
「うむ……杉浦、そっちは?」
「いや……電話会社の回線からは、特に何も……おそらく生贄投票が現れた時刻には、生徒たちは全員が自宅のWi-Fiを使っていた可能性が高いと思いますね」
「なるほどそれだ! すぐに全員の自宅のネット回線のプロバイダーを調べよう」
失敗した。如何せん誰もが、また生贄投票が行われるなんて思っていなかったのだから、そこまで詳しいマニュアルを作っていなかったのだ。
林は舌打ちをした。
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