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「いや課長、ちょっと待ってください」
杉浦が軽く手を上げて制する。
「何だ?」
「いや、それはちょっとおかしいです」
「おかしい? 何がだ?」
林が眉を曲げた。
「いや、普通ネット回線って、一家に一回線ですよね?」
「ああ、まぁ、そうだろうな」
「と、いうことはですよ。複数の家族の中で、なぜあのクラスの子のスマートフォンにだけ、生贄投票が現れたんでしょうか?」
「あっ、なるほど……確かにそうだな」
林は腕を組む。
「誰もが使える回線で、特定の一人を狙うと言うのは、おそらく不可能なんじゃないかと」
「そうか……。まぁ、例えばだが、その回線にウイルスを送って、あのクラスのメンバーのラインとか、そういうアプリだけを狙ってとかは、無理なのか?」
「それはないですね」
横から山口が口を挟んだ。
「なぜだ?」
林が山口を見つめる。
「ですから、今まで調べた端末に限ってですが、インストールしているアプリを操作したとか、書き換えたとかも含めて、浸入したような形跡がまったくないんです」
山口は首を横に振った。
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