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社長からの電話で、花枝は息を飲んだ。
全く持って、一々心臓に悪い。
『あ、花ちゃん?』
「はい」
『もうすぐ着くから、家の前に出て待っといて』
「は、はい。分かりました」
花枝は電話を切ると、急いで玄関へと向かった。
従兄で探偵をやっている島川浩之に電話をかけると、昨夜は遅かったらしく、まだ眠っていて文句を言われたけど、事情を話して頼み込んだ。
なんせあの社長を怒らせると、明日から会社での居場所がなくなってしまうのだ。
ポトクルファーで働けるということは、デザイナーを目指している若者にとっては、夢を実現するための最短距離だと言われている。
社長は若い才能にどんどんチャンスをくれるからだ。
逆に言うと、社長を怒らせれば、夢の実現から大きく遠ざかってしまう。
自宅の前で待機すること五分。社長の赤いスポーツカーが現れた。
助手席から女の人が降りて来ると、後ろの席に移動する。
「花ちゃん乗って」
「は、はい」
花枝は助手席に乗り込んだ。
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