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「とりあえずどっちに行けば良いの?」
「あ、あの、真っ直ぐです」
花枝が前を指差すと、すぐに社長が走り出す。
「このままずっと真っ直ぐ?」
「あ、いえ、次の次の信号を、右に曲がってください」
「分かった」
「あの……社長」
「何?」
「何かあったんですか?」
「は? そんなの何もなきゃ、朝から入間になんか来るわけないでしょ?」
「あ、はい。ですよね、すみません」
社長に不機嫌な顔をされて、花枝は余計なことを言ってしまったと反省した。
「涼花やめなよ。可哀想でしょ」
後部座席の女性が社長を咎める。
「え? 何で? 可哀想なことなんか何もしてないじゃん」
「今のは完全にパワハラだよ」
「ちょ、どこがだよ?」
「あんな偉そうに言って、この子委縮して謝ってるじゃん。可哀想に」
「あ、いえ、全然大丈夫です」
花枝は後ろに向かって頭を下げた。
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