第5章 地獄の始まりを探して

12/40
前へ
/521ページ
次へ
「とりあえずどっちに行けば良いの?」 「あ、あの、真っ直ぐです」 花枝が前を指差すと、すぐに社長が走り出す。 「このままずっと真っ直ぐ?」 「あ、いえ、次の次の信号を、右に曲がってください」 「分かった」 「あの……社長」 「何?」 「何かあったんですか?」 「は? そんなの何もなきゃ、朝から入間になんか来るわけないでしょ?」 「あ、はい。ですよね、すみません」 社長に不機嫌な顔をされて、花枝は余計なことを言ってしまったと反省した。 「涼花やめなよ。可哀想でしょ」 後部座席の女性が社長を咎める。 「え? 何で? 可哀想なことなんか何もしてないじゃん」 「今のは完全にパワハラだよ」 「ちょ、どこがだよ?」 「あんな偉そうに言って、この子委縮して謝ってるじゃん。可哀想に」 「あ、いえ、全然大丈夫です」 花枝は後ろに向かって頭を下げた。
/521ページ

最初のコメントを投稿しよう!

459人が本棚に入れています
本棚に追加