第5章 地獄の始まりを探して

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時刻は八時半。 松井は出社するのが、だいたい九時頃だから、まだ花枝が出社していないことを知らない。 車の運転中なら、電話には出ないかもしれないと思いつつ、連絡を入れることにした。 「社長すみません。ちょっと失礼して、松井さんに電話をかけさせて頂きます」 「ああ、うん」 社長の許可を取ってから、松井に電話をかける。 数回のコールの後、松井が電話に出た。 『おう、どうした?』 「おはようございます。あの、突然なんですが、今から社長と私のイトコのところに行くので、出社するのがちょっと遅くなりそうです。昼前には行けると思いますので」 『は? いや、それは良いんだけど、オマエに任せてあるヤツ、今日までにって言ってあったよな? 間に合うのか?』 「それは……その……何とかします」 『何とかって、絶対に今日中に間に合わせろよ』 「はい……」 花枝は泣きそうな声を出した。
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