459人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうやってモノで釣るのって、良くないよ涼花」
後ろの座席の女性が、社長を咎める。
「別にモノじゃないじゃん」
「だけどね。彼女ってまだ経験浅いんだよね?」
「え、はい。入社して三か月です。すみません」
花枝は自分が責められているような気になって、思わず謝った。
「そんな新人が、いきなりそのラインとかっていうのを持たされてさぁ、その下に付くスタッフはちゃんと仕事をしてくれるの?」
確かにこの女性の言う通りで、どう考えたって花枝より実力のある先輩社員を差し置くのだから、おそらく誰も花枝のラインには入りたがらないだろう。
「それは大丈夫だよ」
「え?」
社長が言い切ったので、花枝は驚いた。
「うちのスタッフはみんなプロだからね。与えられた仕事には全力を尽くすはずだよ。それに花ちゃんは、あの松井ちゃんに抜けられたら困るって言われるほど、実力があるってことだからさぁ、大丈夫だって。な?」
「は、はぁ……」
そう言われると自信がない。花枝は胃が痛くなった。
最初のコメントを投稿しよう!