第5章 地獄の始まりを探して

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「そうやってモノで釣るのって、良くないよ涼花」 後ろの座席の女性が、社長を咎める。 「別にモノじゃないじゃん」 「だけどね。彼女ってまだ経験浅いんだよね?」 「え、はい。入社して三か月です。すみません」 花枝は自分が責められているような気になって、思わず謝った。 「そんな新人が、いきなりそのラインとかっていうのを持たされてさぁ、その下に付くスタッフはちゃんと仕事をしてくれるの?」 確かにこの女性の言う通りで、どう考えたって花枝より実力のある先輩社員を差し置くのだから、おそらく誰も花枝のラインには入りたがらないだろう。 「それは大丈夫だよ」 「え?」 社長が言い切ったので、花枝は驚いた。 「うちのスタッフはみんなプロだからね。与えられた仕事には全力を尽くすはずだよ。それに花ちゃんは、あの松井ちゃんに抜けられたら困るって言われるほど、実力があるってことだからさぁ、大丈夫だって。な?」 「は、はぁ……」 そう言われると自信がない。花枝は胃が痛くなった。
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