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震えながら泣き続ける彩絵を、美沙希はただ黙って抱きしめ続けた。
「はい。電話無いんだろ」
涼花が彩絵に自分のスマートフォンを差し出す。
「え?」
彩絵が美沙希越しに涼花を見た。
「お母さんに電話をして、ここに来てもらった方が良い」
「はい」
彩絵は涙を拭うと、涼花からスマートフォンを受け取って、母親に電話をかける。
『もしもし……?』
知らない番号からかかって来たからだろう。母がこちらの様子を伺うように声を発した。
「お母さん私」
『えっ、彩絵? 彩絵なの?』
「ぅ、ぅう、私」
『どうしたの? あなた泣いているの?』
「お父さんが……ぅ、ぅうううう』
彩絵はそのままスマートフォンを耳から離し、号泣し始めた。
涼花が彩絵からスマートフォンを取り上げると、志穂に事情を説明し、すぐに車で来て欲しい旨を伝え、ラインアプリのIDを交換したのち、現在地の位置情報を送った。
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