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「おい、今から行くのか?」
俊明が金魚のフンのように涼花の後を追う。
「ああ、美奈都が旦那さんに説明してこっちに来るより、アタシが押しかけて行った方が早い」
「いや、オマエ。むこうの旦那さんは生贄投票のことなんて知らないんだぞ。いきなりこんな時間に押しかけて行って、良識を疑われるだろう」
「大丈夫だよ。あの人絶対にアタシには逆らえないから」
涼花は煩わしそうに言う。
「オマエなぁ」
「いいからさっさと着替えろよ!」
「えっ、俺も行くの?」
「当たり前だろう! アンタも当事者だし、何より陸斗の危機を傍観しているつもりか?」
「いや、そうじゃないけど、こんな時間だし……。明日はどうしても外せない会議が……」
「アホか! 息子の命と仕事とどっちが大切かよく考えろ! そんなことでクビになるような会社なら、とっとと辞めれば良いだろ! アタシが食わせてやるから」
「分かった。分かったよ」
こうなると涼花が引かないのは、昔から分かり切っているのだ。俊明は仕方なく着替えを始めた。
「おい陸斗、オマエも着替えろ! いや、オマエはいいや。早く寝ろ」
「あ、うん」
陸斗は頷くと、自分の部屋に戻った。
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