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あのって何よ。私が一体あんた達に何したっていうのよ。これだから男子は嫌いだ。胸の中を真っ黒なもやもやしたものが渦巻いた。私はうつむいて、ぎゅっと下唇を噛んだ。
「あ?お前らそんなこと言う為に来たのか?」
そう言った瀬古くんの声は明らかに怒気を孕んでいた。
「それ、俺だよ。俺が吉岡に絵の指導してもらってんだよ。お前らが期待してるようなことはなんもねーから。ウゼェ」
瀬古くんは声を荒げはしないものの、私が見たことないくらい怒っていた。私の代わりに瀬古くんが怒ってくれたお蔭で、胸の中のもやもやしたものがスッと取れた気がした。
「な、マジになんなよ。ちょっとからかっただけだろ?」
「そうだよ。なんでお前がそんなに怒ってるんだよ。行こうぜ」
二人はばつの悪そうな顔をして、そそくさとその場を立ち去った。
「瀬古くん、私の代わりに怒ってくれてありがとう」
私はちょっとだけ泣きそうになるのを我慢しながら瀬古くんの背中に言葉を投げた。
「……吉岡、夏休み暇か?」
「えっ?」
「俺、補習で夏休みも学校来る予定だからさ」
瀬古くんはこちらを振り向くことなくそう言った。
「まだ試験の結果出てないよ?」と言って、私は笑った。自分の気持ちに気付かないふりをして。
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