ほんの少しだけ、好き

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 「瀬古くん、一体なんだったの?」  「ああ、吉岡を描いてた」  「いつの間に!?なんで!?やだ、恥ずかしい!」  「吉岡も俺のこと描いてただろ?隠してたってバレてんだよ」  私が隠れて瀬古くんのことを描いていたことは、とっくに瀬古くんにバレていたのだ。私は顔から火が出そうだった。  「当たりだろ?なあ、描いたやつ見せろよ」  瀬古くんはにやりと笑うと、私に右手を差し出した。よく考えたら友人の顔を描くことに深い意味なんかないのだ。瀬古くんが友人と呼べるのかどうかは置いておくとして、別に隠す必要もなければ恥ずかしがる必要もない。うん、きっとそう。  「見せてもいいけど、その代わり瀬古くんが描いた私も見せて」  私はそう言いながら瀬古くんに自分のスケッチブックを手渡した。瀬古くんは何も言わずにまじまじと私が描いた絵を見ていた。  「ど、どうなのよ」  先に沈黙を破ったのは私だった。自分が描いた絵をそんなにじっくり見られることなどないので、改めて私は恥ずかしくなってきてしまったのだ。  「やっぱり吉岡はうめーよ」と瀬古くんは言った。
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