ほんの少しだけ、好き

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 「瀬古、お前こんな所で何してるんだ?」  細川先生は冷たい声で言い放った。  「俺が何してようと先生には関係ないですよね?」  瀬古くんはそう言って、ぎろりと細川先生を睨みつけた。  細川先生は腕を組みながら神経質そうに眼鏡のブリッジに手を当てる。  「お前、吉岡に何かしてるんじゃないか?お前が美術部に入るなんてどう考えてもおかしいもんなぁ?吉岡に入部届を渡された時からおかしいと思ってたんだよ」  きっと細川先生は何か勘違いしているのだ。そう思った私は即座に先生の言葉を否定した。  「違います!そもそも私が頼んで瀬古くんに美術部に入ってもらったんです!」  しかし、細川先生は私の言葉を聞き入れてはくれなかった。まるで私なんかその場にいないみたいに、先生は話を続けた。  「吉岡の模試の点数が落ちてるのはお前のせいじゃないのか?なあ、吉岡はお前とは比べ物にならないほど良い大学に行ける頭を持ってるんだよ。どうせお前は大した夢もなくちゃらんぽらんに生きてるんだろうけどな、吉岡はお前とは違うんだよ。頼むから吉岡の邪魔だけはしないでくれるか?」
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