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自虐って例え本当のことだとしても「そんなことないよ」って相手に気を使わせて言わせてしまうから言わないように気を付けてたんだけどな。性格までブスになったらもう救いようがないよ。
「確かに吉岡は明るくねぇな」と瀬古くんが言ったので私の気持ちは地の底まで落ちそうになった。しかし、瀬古くんはこう続けた。
「でもブスではねぇぞ?スカートなげーしクラスの女子みたいに顔とか爪とかキラキラしてねーけど。こうやって俺に付き合ってくれてるしな。吉岡は良いやつだ。てか教室でも俺と話してる時みたいにもっと笑えばいいんじゃねぇの?笑った方がいいぞ?」
こうして瀬古くんと時間を共にするようになって気付いたことがある。瀬古くんは嘘がつけない。だからお世辞とかも言えないし思ったことがすぐ口から出てしまう。そして、瀬古くんは結構優しい。
「……ありがとう」
瀬古くんは照れたように「まぁ、髪型はダセェから変えた方がいいと思うけどな」と付け足した。
「俺の名前なんか全然普通すぎだわ。金八先生かっつーの。どうせなら剣と書いてブレイドとか天に馬でペガサスとかそんなんが良かったわ」
「瀬古くんそれはそれでどうかと思うよ」
木々の緑は日に日にその深さを増していた。その青葉がいつもよりも色鮮やかに見えるのは、もうすぐ梅雨が訪れようとしているからだろうか。この日から私は密かに瀬古くんのことを描くようになった。
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