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「わざわざ綺麗な体を隠すな。君が自分をどう思っているのか知らないが、俺はたとえどんな君を見せられても、全て受け止める。約束する」
「……じゃあ」
顔を横に背けたまま、花衣は小さな声で言った。
「私がもう、デザイナーの夢を追うのはやめたいんですって言ったら、どう思いますか……?」
「……やめたいのか?」
花衣は視線を壁に向けたままコクリと頷いた。
「後悔しないのか」
「分かりません……」
溜め息と同時に答え、花衣はゆっくりと腰を下ろした。視線は横に向けたままだった。
「でも自分には、デザイナーの才能はないと思うんです。学校で三年学んで思いました。どの賞に応募しても一次選考にも残れないし……。それなら早目に見切りをつけて、留学に使うお金も別のことに使った方がいいかなって思って……」
「留学しないのなら、学校を出た後はどうするんだ」
「まだ決めていません。すぐに結婚して、家庭に入りたいって言ったら、一砥さんはどう思いますか」
そこでようやく、花衣は一砥の顔を見た。
一砥は静かな表情で彼女の視線を受け止めて、「君がそうしたいのなら、そうすればいいと思う」と答えた。
「留学せずに俺の側にいてくれると言うなら、君のその意志を尊重する。ただし専業主婦になる必要はない」
「じゃあ働いてもいいんですか?」
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