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地元の普通高校に通っていた花衣だが成績は優秀で、当時の担任から「専門学校へ行くのはもったいない。まず大学へ進んでから専門学校へ行くという選択もある」と強く大学進学を勧められた。
それを頑なに拒み、「私、一色美里さんみたいな、世界的なファッションデザイナーになりたいんです」と宣言したのは、高校二年の夏だったか冬だったか。
だが実際に専門学校に進み、ファッションの世界について学べば学ぶほど、この業界の厳しさを知ることになった。
まず学校からして厳しい授業内容で、課題の多さに根を上げてリタイヤしていく者が何割か、さらに経済的事情や他の道を見つけて中退する者、大学に入り直す者など、入学当時と卒業時の生徒数には大きな隔たりがある。
無事卒業出来たとしても、成功者として名を馳せることが出来るのは、業界人口0.01パーセントくらいの運と才能とカリスマ性を備えた人だけで、業界の末端に名を連ねることが出来れば御の字、ファッションに関わる仕事が出来ればラッキー、それ以外の運にも才能にも恵まれない人間は、ファッションへの道を泣く泣く諦めるしかない、というのがこの道を選んだ者達の現実だ。
それは他の業界でも同じかもしれないが、ファッション業界は特に、選ばれし者達の世界だと感じる。
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