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第八話「Just the way you are」
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火曜日。
いつものように一砥を送り出した後、花衣は部屋の掃除を始めた。
最近は一砥もかなり行儀が良くなり、週に五日通わずともいいくらい掃除が必要な箇所は減っていた。
晴れて恋人同士になった二人だが、一砥は「これからもうちでのバイトは続けて欲しい。もちろん報酬も変わらず払う」と言ってくれた。
花衣にとっても正直、この申し出はとても有難かった。
裕福な恋人が出来たからと言って、実際に結婚するまでは今までと変わらず経済的に厳しい立場だし、働ける間は働いていたかった。
目下の悩みは卒業後の進路で、当初は渡欧を計画していたが、一砥と付き合うことになってその予定はなくなり、かといって正社員として就職するのも、いずれ専業主婦になるのが決定しているのなら中途半端になりそうで気が進まない。
同級生達はほとんど就職先を決め、決まっていない子も皆、話題にするのは卒業後の進路についてだ。
宙ぶらりん状態の花衣はその会話に加われず、O-Cのショーが終わればモデル業も終わりで、十月以降のスケジュールは空白なままだった。
(こんなことなら、専門学校でなく普通に四年制大学へ行けば良かった……)
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