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「私と付き合ってください!」  富沢高校入学式の式典とホームルームが終わり、皆が帰路につく中、吉川美樹は右手をビシッと前に出し、その手が握られるのを待った。  一目惚れだった。入学式で同じクラス、隣の席に座っていた藤原 圭は、美樹が今まで見てきたどの男子でも考えられないくらい引き寄せられるものがあった。  圭は「えっ……」と困惑の色を見せた。  確かに入学式で初めて会って、名前も知らない美樹からの突然の告白は、少々強引過ぎたかもしれない。  しかし、猪突猛進な美樹にとって、そんな事は些細な事だった。 「ごめん……」  圭は一言だけそう言って美樹に背中を向けて去っていった。  前に出されたままの右手が所在をなくして伸ばされていた。  美樹は思った。今日は初対面だったので仕方がない。明日からも隣の席に座れるのだから、これから自分を知ってもらえば良い。  そんな安直な考えに燃えていた。
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