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それはとある雨の日だった。
「圭くん、一緒に帰ろう♪」
美樹が後ろから話しかけると、圭はだるそうにこちらを振り向いた。
「どうせ断ってもついてくるんだろ?」
「せいかーい!」
美樹は圭の横にひっついて、延々と圭に話し続けた。圭の返事は「ああ」とか「へえ」など、そっけないものばかりだったが、それでも美樹には楽しい時間だ。
……と、その時だった。
車道側を歩いていた美樹に、通りかかった車が水たまりを大きく跳ね上げようとしたのだ。
圭の行動は早かった。一瞬で美樹の腕を引っ張り、ビシャビシャになるのを回避してくれたのだ。
「あ、ありがとう……」
本来であれば嬉しくたまらないシチュエーションであるはずなのに、美樹は何故か素直に喜べなかった。何故か切なく、悲しくなったのだ。
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