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榛に躑躅、金雀枝や宿木、芥子と大麻。
特に用途も考えず、魔女らしい草木を植えに植えた{任意の土地}、その中央の屋敷に{任意の悪い魔女}は住んでいる。
好きな魔術は「変質」と「融合」、嫌いな言葉は「常識」と「正統」、好きでも嫌いでもない食べ物は「蒟蒻」と「半平」。
最近の研究テーマは「特殊な魔素循環による魔素力学第一法則の凌駕の可能性について」だが、これには前提的な装置として、環状ないしフラクタル状に接合した複数の人体を、様々なパターンで用意する必要があった。
魔女狩りは人を人でなくし、人の尊厳も権利も剥奪する制度だから、魔女狩りの対象になった「新米魔女」は、人の社会を抜けざるを得ない。先輩魔女である{任意の悪い魔女}が誘えば簡単に着いて来る。
そうして、何の力もない名ばかり魔女は、本物の魔女にとって、安全で安定的かつ無料の優良素材となる。火炙りにするより余程有益だ。
今の所、{任意の悪い魔女}の研究は「特定の条件下での魔素循環状態に於ける第一法則の実証」を並べる状況だが、思い付く限りの条件で試行を繰り返せば、その何れかが魔素増幅ないし永久機関または準永久機関の礎となる可能性も無くはない。
「ううん。一見出力量は増えてるけど、入力時の初期魔素波紋と全然別物が出てるわね」
『これ、回路内の脂肪か何かが燃えて魔素に変換されただけじゃないコン?』
魔女の呟きに答える声は、彼女が左手を影絵のキツネに構え、パクパクと(目の部分を)開閉させながら発する、彼女自身の裏声だ。
「そうねえ。栄養状態の良いお貴族様は不純物が多くて困るわ」
『栄養失調の貧民より魔素の通りは良いけどコン』
「回路を組む前に、お貴族様と貧民を融合ぜて平均化してみたらどうかしら?」
『多分、悪いとこ取りになると思うコン』
「やる前から諦めるのは真摯でないわ」
手元の素材で組むには少々数が足りないので、また調達してくることになる。とは言え、この時代、使える素材は潤沢だ。
もしこの実験が成功すれば、世界の魔素関連技術は一気に革命される。きっと皆幸せになるだろう。そう{任意の悪い魔女}はキツネくんに向けて微笑んだ。
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