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四葉の君と王子様
さらさらと滑らかな絹のような感触が私の首元に触れる。
グレイッシュピンクに染められた髪から覗く肌は白く抜けて、長い睫毛が縁取る閉じられた目蓋は、開かれると美しい形をしている。
まるでおとぎ話に出てくるエルフのお姫様のようだ。
(こんなにでかくなったのは想定外だったけど)
私は駅からずっと肩口にもたれている相手の頭をぽんぽんと叩く。
「ほら、希望もう起きな、学校つく」
「ん…おねがい光、もちょっと」
首元にぐりぐりと頭をすり寄せる相手は、昔は愛らしいお姫様のようだったが、今や百八十を超える長身の男子高校生だ。
その男子高校生、白咲希望はその愛らしさと元来のぽやぽやとした性格から、幼少の頃は回りの男子にちょっかいをだされては泣いていた。
当時同学年内でかなり背が高かった私は、よく希望を背に庇って相手の男子を文字通りはり倒していた。
張り手四天王などという謎のあだ名をつけられていたが、残りの三人が誰なのか現在まで解明されていない。
以来、愛らしさを残しつつも美しく大きく成長した希望を未だに甘やかしてしまっている。
「階段はさすがに支えらんないから、下駄箱着いたらちゃんとして」
「ん~」
私の腰に腕を回して抱き込む形でバランスをとる相手は、曖昧に返事をした。
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