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ずっと近くにいるせいか、希望は自分の知らない私の交遊関係があると不安になるらしい。
昔は確かに希望は私以外あまり仲の良い友達がいなかったから、唯一の友人を他の友人にとられてしまうと不安になるのも分かる。
しかし今やきちんと彼にも友達はいるのだから、そこまでネガティブにならなくても良さそうなのだが。
梅に重い男だなと言われたが、甘えられて悪い気がしない自分も大概だと思う。
「この本、いつも見に行く純文学コーナーに混ざって置いてあってさ。装丁もこんなだから気になって手に取ったらこれが入ってて」
私は手にしていた本を開いて、そこに挟まれていた和紙のしおりを取り出して見せた。
「四葉のクローバーだ」
「前の人の忘れ物だと思うんだけど、懐かしいよね」
暖かみのある黄みがかった和紙のしおりの真ん中に、四葉のクローバーが収まるそれをそっと撫でる。
「光とよく探したよね。俺の名前と意味が一緒だっていって」
昔から本が好きだった私は、物語に出て来た『クローバーは希望という意味を持っている』という一説を読んでその事を知った。
そこには『きぼう』とルビがふられていたが、希望と同じ字だからと記憶に焼き付いたのだ。
以来、光と四葉のクローバー探しをするのは定番の遊びになっていた。
「花冠も作ったよね、シロツメクサで。希望によく似合ってて、可愛かったなー」
「今の俺はもう可愛くないもんね」
「可愛いっていってほしいの?」
「優しくされたい気持ちと頼られたい気持ちが揺らぐ複雑な男心」
その様子に笑ってしまえば、希望はまたすねた顔をした。
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