椿の花が笑う時

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『どうかしたのかい?』  テーブルの上に立てられたスマートフォンから野太い声がする。俺は真っ暗な画面を睨みつけた。 「どうもしねえよ」 『顔色が優れないようだが?』 「気のせいだ」  テレビ通話をしている。その方が効率が良いのだそうだ。ただし、俺のスマホの画面は真っ黒。話し相手の姿は見えない。  そこに微かに写る俺の顔は確かに覇気がない。とても殺人鬼などには見えない。どこにでもいる、ただの人間のまぬけ面。  暗闇の向こうの野太い声は小さく笑った。 『事件のことを思い出したのかい? 仲間内でも噂になっていたからなあ。一体誰がやったんだって。結局、誰にも分からなかったがな』 「それでチャド、この案件はどうすべきだと思う?」  警察でさえ捕まえられない犯人を捕まえ、殺す。字面だけ見ればその難易度はかなり高い。それは承知の上で勢いに任せて依頼を承諾してしまったが、警察同様、俺自身も手詰まりだ。  それで殺し屋仲間に相談したのだが、 『それは自分で決めることさ。依頼を断ってターゲットを生かすか、依頼を引き受けてターゲットを殺すか。その二択だろう? 他に考える余地なんてない。たった二択だ。簡単じゃないか』 「簡単じゃねえよ。そもそもこの事件の犯人は――――」 「なにしてるの?」
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