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「でもさ」
ポニーテールの少女は苦々しい顔で言った。
「殺されるべき人間が殺される制度って、その制度を利用して人を殺そうとする人は、同じ殺されるべき人間じゃないの? 結局は人殺しでしょ?」
「その殺人を正当化しているんだよ」
俺は向かいの少女を視界に入れないようにしながら熱いコーヒーを口にする。その温度と苦みが頭の中に充満する煙のような眠気を吹き飛ばしてくれた、ような気がした。
いかん、しっかりしなくては。眠い頭を縛りあげて目をこじ開ける。幸い、このファミレスに他の客はおらず、この会話が他に漏れることはほぼないだろうが、今は仕事中、細心の注意を払っておいて無駄にはならんだろう。
「どういう意味?」
少女は身を乗り出すようにして顔を覗き込んできた。その際に揺れた苺パフェのグラスを手で支えながら、少女の熱い視線から逃れるようにそっぽを向く。
「人は誰しも人を恨み、妬み、怒り、憎み、呪う生き物さ。その究極が殺したいという願望だ。それを抱くことになんの問題もない。それを行動に移してしまうから罪に問われるわけで」
「そんなの当たり前じゃん」
少女は不機嫌そうにパフェを口に運んでいるが、一口食べる度に表情の刺々しさが解れていくのが微笑ましい。ずっと甘いものだけを食べていればいいのに。そうしてついにはその顔は幸せな甘さに満たされる。人類全てがそうであればいいのに。
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