椿の花が笑う時

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 俺は続けた。 「それじゃあ、人を殺したいと思った人の事情に一切の同情や共感の余地がなかったのか」 「ないに決まってるよ」  語勢強く語ったつもりだったのだが、すぐに少女にせき止められてしまった。 「いいから聞けよ」 「ふーん」  面白くなさそうな少女はスプーンの速度を上げながら尖った口にパフェを流し込む。  咳払い一つ。 「人から恨みを買う人間はこの社会にごまんといる。それはつまり、人を恨む人間はもっと沢山いるってわけだ。そんな人たちを救うにはどうすればいいのか。国は色々な手立てを模索してきた。が、社会に対する不満は募るばかりで、怨恨による犯罪は増える一方。住む場所、働く環境、生きる世界が少し違っただけで普通に生きていられたはずの人間が、他人のせいで犯罪者になってしまうことを世間は許さなかった。その結果、生まれたのが暗殺法と俺みたいな殺し屋だ」  そう、俺は殺し屋。  暗殺法ができてすぐに免許をとった。決してそれまで人を殺したことなどない。人を殺したいと思ったこともない。ただ偶然にも暗殺のスキルがあった。才能があった。だから殺し屋になれた。だから人を殺して、生計を立てている。自分が生きるために、人を殺している。
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