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『俺へ
野球部に入部して今年で6年目。最初はこんなに活躍できると思っていなかったけど、まさか決勝戦にまで進めるなんて驚きだ。これもチームみんなのおかげだ。決勝戦で勝った聖青葉高校は30年ぶりの甲子園出場だ。甲子園を目指すがバスが途中で事故にあい試合はできない。たくさんいなくなりたくさん泣く葬儀会場。悲しい夏だった』
「いやだ!行かない!」
信之は部屋から出てこない。母親と父親が扉を壊れんばかりに叩く。
「何を言っているんだ。甲子園を目の前にして腹が痛いから決勝戦を休むとか聞いたことないぞ!」
「夢の大舞台じゃない。何があったの、ねえノブくん」
信之は2人の声を無視してベッドでうずくまった。
(みんなに何を言われようが構わない。エースピッチャーがいなきゃさすがに無理だろ。みんなには悪いが俺は甲子園よりみんなの命をとる)
「信之!ふざけるのもいい加減にいろ!今行けばまだ間に合う!」
ガチャンという大きな音を立てて部屋の鍵が壊された。信之はベッドにうずくまり腹を抑えて最終手段に出た。
「きゅ、救急車を……」
そして、気を失う演技。両親はまさか本当に腹が痛かったとは思わず、信之の想定通り救急車を呼んだ。そして母親が監督と部長に電話をしているのを聞いて信之は安堵した。
(これで、助かる)
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