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毎年7月になると父方の祖母から田舎で採れた果物や野菜、それにリサの洋服が入った箱が毎年送られてくる。そのお礼の手紙を書く事が、リサが字を書けるようになった5歳から毎年恒例になっていた。
(おばあちゃんの送ってくる洋服ってダサいんだよねって、言えないし。困っちゃう)
『おばあちゃんへ
お元気ですか?
今年も野菜やくだもの、かわいいふくをどうもありがとう。
もうすぐお盆だね。
今年もにわでスイカわりをしたりバーベキューをしたりトマトやきゅうりをとって食べたりするのが楽しみです。
13日の午後にはおばあちゃんの家につきます。
たくさんあそぼうね。
リサ』
「リサー?書いたのー?今おばあちゃんに電話するけどリサもお話ししてくれる?」
(うるさいなー!)
母親の声にウンザリしてリサはため息を吐いた。今年のお年玉付き年賀はがきで当たった切手を封筒に貼り、手紙を胸に抱え玄関を開けた。すると、先ほどまで青々と晴れていた空がオレンジ色になり、灰色の雲が漂っていた。遠くで雷の落ちる音がしたとたん、間も無くして雨が降り出した。夕立だ。
リサは100メートル先のポストまで行くのが億劫になり、一度玄関の扉を閉めたが、母親の金切り声を思い出し、傘をさしてポストまで走ることを決めた。
意を決して玄関の扉を開け、お気に入りの水色の傘をさし、ポストまでの道を走った。
途中、雨脚が強くなったので手紙を脇に挟んで濡れないように工夫した。
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