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……その後。
寝かせていたベッドで目を覚ました兄と会話をした。
会話の中で、兄は僕のあげたバスボムをとても気に入っていたことを伝えてくれた。
そのときの兄の感じを見るに、どうやら彼は意識朦朧としていたときに僕に何を言ったのかは憶えていなさそうだった。
熱と水に濡れた肌を晒した自分がどんな”デレ”を僕に見せたのか、分かっていないようだった――…。
「にーさんっ」
だから僕は、寝惚けた兄を見るのが好きだ。
とんでもなく理性がポンコツになって、とんでもなく意識が”がばがば”になるけれど。
兄が普段出来なくて言えないような、たくさんの”本音”が溢れるから。
「兄さん、好き」
いつか兄さんが、どんなときでも”本音”を言えるように。
気兼ねなく甘えられるようにしてあげるのが、今後の僕の課題なのだろう。
…素直になれなくて適度にツンツンしている今の兄さんも、可愛げがあって見ているのが楽しいんだけどね。
「…さてっ」
兄の寝顔を見ていたら僕も眠たくなってきた。
ちょっと早いけど、今日はもう休もうかな。
「はい兄さん奥寄ってーっ」
眠っている兄をずりずりと壁際へ押す。
そして1枚の毛布を分かち合いながら、僕は兄の隣に寝転んだ。
シングルベッドに大の大人2人プラス猫1匹はやはり狭い。
その密接具合すら愛しくて、僕はじゃれるように兄を腕の中に抱き締めた。
「……、んん…」
僕の存在を肌で感じたらしい兄がもぞもぞと身を捩り、目を開ける。
とろんと微睡んだ視線が、僕を見た。
「せまい」
それはそれはまぁめちゃくちゃ不機嫌な顔でいらっしゃった。
「せまい、ベッドからおりろ」
兄は引っ付いている僕に煩わしそうにそれだけ言って、こちらに背を向けると何事もなかったかのように眠りに就いた。
僕のベッドで。
そう、僕の部屋の僕のベッドでだ。
あれ、そこそこ眠たかったのになんか目が冴えてきた。
……。
は?
(おわり)
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