◯月☆日

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――ピピッ、と、脇の下に挟んでいた体温計が音を鳴らした。 「何度?」 隣に座っていた那月が、俺の脇下からさっと体温計を抜き取る。 有無を言わせず検温した本人よりも先に確認するのは、適当な数値を言って電源を切る俺の誤魔化しを防ぐためなのだろうか。 …まさにそうするつもりだったから、見抜かれていて悔しい。 「38.1。あー露骨に熱あるね」 嘘ではないよとでも言うように、那月は俺にも確認させた。 なるほど、露骨に発熱している。 だったらこの妙な寒気と怠さにも納得だ。 「どうりで昨日はずっと調子が出なかったわけだ……」 身体の不調を目に見える形で改めて確認し、気分が滅入った俺は思わず小さな溜め息を吐いてしまった。 「わーしんどいねーお兄ちゃん。身体辛いねー」 「……」 大袈裟に悲しそうな声を上げた那月の懐に引き込まれる。 頬をなすり付けてくるほどのぎゅっと縋るような抱き締め方に、俺は大人しくされるがままになった。 「昨日僕と一緒に”恐怖映像スペシャルランキング”の録画観たからかな? 兄さん呪われちゃったのー?」 「そんなわけ」 何を幼稚なことを言うのかと呆れて否定する。 「…典型的な風邪だ。ただの風邪」 口を開いて声を出せば、喉に辛い痛みを覚えた。 おそらく季節の変わり目で自律神経のバランスが崩れたか、患者から貰ってきたかのどちらかだろう。 なんにせよ、医師としては情けない話だ。
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